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東京地方裁判所 昭和45年(借チ)1020号 決定

〔主文〕1 申立人が別紙目録(二)の(二)の改築をすることを許可する。

2 申立人は相手方に対し金八九、〇〇〇円を支払え。

3 本裁判確定の月の翌月から本件賃貸借契約の賃料を一カ月3.3平方米当り金一三〇円と定める。

〔理由〕一 本件申立の要旨

1 申立人は、相手方から、別紙目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)を、非堅固建物所有の目的、期間昭和六四年五月三一日までの約で賃借しており、現地代は一カ月金一、五〇〇円である。

2 申立人は、本件土地の上に、家屋番号同町八五六番一二、木造瓦葺平家建居宅床面積26.44平方米(現況38.84平方米)を所有している。

3 申立人は、右建物を取りこわし、本件土地上に別紙目録(二)の(一)(第一次的計画)のとおり改築すべく計画中であるが、本件賃貸借契約においては、増改築につき賃貸人の書面による承諾を要する旨の特約が存するが、相手方の承諾がえられないので、右承諾に代わる許可の裁判を求める。(なお、第一次的計画が認められない場合は別紙目録(二)の(二)(第二次的計画)のとおりに設計を変更する。)

二 相手方の答弁の要旨

申立人主張のごとき賃貸借契約が存することは認めるが、右契約において申立人は二階建建物を建築しない旨を約し、そのため、更新料を一万円減額したもので、本件改築により相手方居宅の日照が著しく害せられ、本件申立は失当である。

三 鑑定委員会の意見の要旨

本件改築は、二階増築部分の西側の面積・位置等を制限して許可すべきである。申立どおりの改築を認めた場合、申立人に金一六七、七五一円の支払を命ずるのが相当である。給付額の根拠としては、つぎの三つの試算の平均値による。第一は、適正な更新料と増改築承諾料の合計と実際に支払われた更新料の差額金八九、五〇〇円。すなわち、本件土地の更地価格を3.3平方米当り金一五万円底地価格をその三〇%とし、適正賃料(年三%)と実際賃料の差による適正更新料は、3.3平方米当り金四、八〇〇円、増改築承諾料を日照との関係も考慮して借地権価格の一〇%としたうえ、実際に支払われた更新料(合計金一四万円)の差は上記のとおりとなる。第二は、アパート等において日照のある部屋とない部屋の賃料差は一割位であり、相手方の日照が阻害される部屋の相当賃料の二〇年分の現価(金二〇六、四五八円)と、申立人の支払つた更新料と借地非訟事件の増改築承諾料の差額(金七八、八〇円)を控除した金一二七、六五八円。第三は、日照の利益を光と熱と快適度等の問題とみて、これを機器により代替させ快適度を補充させて求めた金一四九、五四六円。

四 当裁判所の判断

1 本件で取調べた資料によれば、前記一の事実のほか、申立人相手方間の本件土地賃貸借は更新をめぐつて紛争中のところ、昭和四四年九月一四日申立人が更新料として金一四万円を支払うことで更新されたことが認められ、右事実によれば、申立人は、本件土地の適法な賃借人であることは明らかである。

しかして、申立人の改築計画は、法令の制限上適法であり、土地の利用上支障となる点は認められない。

ところで、増改築許可の裁判にあたつては、一切の事情として、隣地との関係を考慮すべきところ、相手方は本件申立は隣地に存する相手方居宅の日照を害するので許されないと主張するので判断する。(なお、相手方は前記更新契約に際し、申立人が二階建建物を建築しない旨約したと主張するが、かりに右のごとき約束が存しても、それは借地法八条の二第二項の増改築制限約款の一つであり、これが存すから直ちに二階建建物が建築されないものでなく、当該具体的な増改築計画につき、その約款を一時的に排除するのが相当か否かを各別に決することを要する。)

ところで、前記資料によれば、本件土地附近は、概して家内工業地帯であり、二階建程度の作業所、住宅が密集して混在しており、準工業地域の指定のほか、準防火地域、第二種容積制限地区に指定されていること、本件土地は、およそ間口5.5米、奥行九米(面積49.58平方米)の短形状の土地であり、北側において相手方所有の居宅が、南側には平家建建物、東側には二階建建物が存すること、右相手方の建物は、本件土地の北側の境界から約2.5米強(最短)ないし3.0米(最長)へだてて建築されている二階建建物(一階14.25坪、二階7.25坪)であり、一、二階の各部分に南側、東側に窓があり、右一階南側六畳の部屋が居間として使用されていること、申立人の第一次的計画は、右北側境界から0.45米へだてて軒先まで六米の高さの二階建建物を建築しようとするもので、これが認められない場合は、設計を変更し、敷地の南側を犠牲にし、第二次的に、建物を右境界から1.45米ないし1.15米へだてて建築するものであるが、右改築計画のうち、第一次的計画によるときは、相手方は、二階部分をともかく、一階部分の南側の窓からの日照は全く失われるに至るが、第二次的計画においては、一階部分の南側の窓からも相当な日照を受ることができることが認められる。

右認定の事実によれば、申立人が、本件土地に二階建建物を建築することじたいは、本件土地の形状から必要かつ有効であり、附近一般の土地の利用状況からみて妥当たるを失わないが、第一次的計画によるときは、相手方が現に享受している一階南側からの日照を全面的に奪うもので相当でないが、第二次的計画による場合には、申立人も、敷地の南側部分を犠牲にするもので、相手方の日照の一部が失われるとしても、その程度は、後記附随処分による調整により受忍を不当とする事由はない。そこで、本件申立は、別紙目録(二)の(二)による第二次的計画により許可すべきである。

2 附随の処分につき検討する。

本件許可の裁判にともなう当事者の利害を調整するため申立人に財産上の給付を命ずべく、前記のとおり日照の阻害を受忍すべき相手方の不利益を考慮のうえ、本件賃貸借の経緯特に前記のとおり更新料として金一四万円を支払つて更新契約を結んだおよび本件改築建物の程度に徴し、鑑定委員会の意見中第一次試算を参考にして、その給付額を金八九、〇〇〇円と定める。

賃料は、更新契約の際改訂されたばかりであるが、使用効率の増加にともない、この際三割増額し、3.3平方米当り金一三〇円と定める。(筧康生)

目録

(土地)

東京都荒川区荒川二丁目三三番三

宅地 1019.14平方米(308.29坪)のうち東南中位部分

49.58平方米(一五坪)

目録

(改築計画)

既存建物を取りこわしたうえ、

(一) 木造スレート葺二階建

一階 28.56平方米

二階 28.15平方米

を添付図面(一)のとおり建築する。

(二) 右建物を添付図面(二)のとおり建築する

なお、

軒の高さ 六米以下

最高の高さ 6.80米以下

にする。

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